渡辺 陽一 ナポリ料理ブログ

郷土料理を愛してやまないイタリア料理人https://www.instagram.com/watanabe_yoichi_/

ナポリ風ラグー (Ragù napoletano)

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肉類のラグー煮

ナポリ料理を語る上でまず最初に外せないのがこのナポリ風ラグーではないでしょうか。一般的にラグーというとボローニア風(Ragù alla bolognese)、すなわち挽肉を煮込んだミートソースが有名ですがナポリでは塊肉を使います。このラグーはナポリ人にとってまさにおふくろの味といった家庭の味で家ごとに、またレストランごとに作り方が異なります。その歴史は18~19世紀に遡ります。その頃のナポリは両シチリア王国(Regno delle Due Sicilie)の支配下にあり貴族たちはこぞってフランス人シェフを雇っていたのです。その彼らはモンズ(Monsù,Monzù)と呼ばれておりその言葉の由来はフランス語のムッシュ(Monsieur)がナポリ語やシチリア語の方言でそうなったといわれています。彼らはナポリ料理革命を起こした英雄として今でも語り継がれています。

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さてナポリ風ラグーの作り方ですがお肉は牛肉のすね肉や肩肉、ばら肉など煮込み用の部位が使われます。また豚肉のスペアリブを一緒に煮込むことが多く適度な脂肪分をソースに与えてくれますのでコクが出ます。その他ブラショーラ(Braciolaのナポリ方言)と呼ばれる牛肉ロールや豚皮のロール、サルシッチャなども一緒に煮込むことが多くレシピが多数あるのもうなずけます。お肉を柔らかく煮込むのにはホールトマトを裏漉したり、パッサート(Passato di pomodoro)と呼ばれるすでにトマトを裏ごして瓶詰めになっているものや、トマトペーストが使われます。ひとたびお鍋の中のソースが沸騰したら後はごく弱火にしてソースの表面が暴れないように注意しながら数時間かけてゆっくり煮込みます。イタリア語ではパイプの煙をくゆらしているという表現をします。このラグーで煮込んだ肉類はメインディッシュとして日曜日に家族が集まる時の定番料理なのですがパスタのソースとしてやラザニアやナスのチーズ焼きなどに幅広く使われナポリ料理には頻繁に登場します。変わった食べ方としては茹でたお米にこのラグーをかけて食べるというものでしょうか。お米にラグー、バター、パルメザンチーズだけをかけたものを初めて見た時は本当にびっくりしました。イタリア人にとってお米は正にパスタと同じなのだと思いました。

 

ナポリ風ラグー材料

牛肉(煮込み用部位)

豚肉スペアリブ

玉ねぎ

白ワインまたは赤ワイン

ホールトマトの裏ごししたもの

トマトペースト

ローリエ

オリーブオイル