スカンピ(Scampi)というエビは日本でもかなり認知度が高いので皆さんもご存じだと思います。イタリア料理店やフランス料理店、スペイン料理店では欠かせない高級食材の一つです。イタリア語ではスカンピ(Scampi)、フランス語ではラングスティーヌ(Langoustine)、
英語ではリトル・ロブスター(Little Lobster)又はノルウェーロブスター(Norway Lobster)とも呼ぶようです。
日本においては赤座(あかざ)エビがよく似ています。赤座と呼ぶのは体の色合いがアカザ科の植物の若い葉の色合いに似ているためだそうです。赤座エビは関東から九州まで全国に生息していてその身は甘みが強く、生で食べても火を通しても美味しいので調理法を選びません。ミソもデリケートな味わいで伊勢エビよりも美味しいという人もいるぐらいです。
このエビ、大変悩ましいことに手長エビと呼ぶのは実は間違っているのです。手長エビというのは本来、淡水に生息する別の種類のエビだからなのです。よく居酒屋にあるあれです。とは言っても一般的に手長エビといえば誰もがスカンピのことを思い浮かべるということから、どこのレストランでも手長エビと呼んでいるのが実情なのです。
さてスカンピのリングイーネはナポリ料理の中でも花形といえる一皿でしょう。海辺の高級レストランには必ずといってよいほどメニューにありますし結婚式などにもよく登場します。ある意味イタリアにおいてもそこそこ値段がする料理ですので滅多に食べることのないご馳走といえるのです。この料理をいつも食べている人は本当に幸せですね!
作り方はとてもシンプルで潰しにんにくをオリーブ油で炒めて半分に割ったスカンピをさっと焼きます。そしてブランデーや白ワインでフランベしてチェリートマトを入れるかトマトソースを加えてさっと煮るというものです。ナポリではあさりのスパゲッティと同じくトマトが少量入るのが一般的ですが、もちろん好みでトマトなしにもできます。ちなみに私はたっぷりのトマトを加えてスカンピを煮込むやり方が好きです。
しかしここで問題となることがあります。スカンピの出汁をソースに移したいと思うなら少し煮ることが必要となりますが、煮てしまうと身が固くなってしまうということです。ですから身を固くしたくないという理由であまり加熱しないでフライパンから出してしまう人も多いのですが、それでは肝心のパスタが美味しく頂けません。
そんな理由から私はスカンピの頭と身を切り離して調理します。最初は一緒に焼くのですがフランベをしたあと身の方は取り出しておきます。そして頭を煮込んでソースが美味しくなったらまた身をフライパンの中に戻すのです。ちなみにナポリではそんな面倒なことはしません。半分に割ったスカンピは最初から最後までフライパンの中に入れておくのが一般的です。やはりパスタを美味しく食べることが優先なので身が固くなることには目をつぶるのでしょうね。あと面白いことにこの料理は誰もがリングイーネで作ります。もちろんスパゲッティでもいいようなものですがイタリアにおいてそのメニューは見たことがありません。それだけリングイーネとの相性がいいのでしょうね。
近年ではスカンピの需要が増えたことで価格が一気に上がってしまいました。おそらく私が若いころの2倍ぐらいにはなっているのではないでしょうか?お客様に安く提供できないのは何とも寂しいことです。こんな素晴らしい料理をもっと手軽に食べてもらいたいものです。
手長エビのリングイーネ材料
スカンピ
トマト(チェリートマトや完熟トマトお好みで)
にんにく
イタリアンパセリ
ブランデー
白ワイン
リングイーネ