渡辺 陽一 ナポリ料理ブログ

郷土料理を愛してやまないイタリア料理人https://www.instagram.com/watanabe_yoichi_/

イタリアの冬野菜(Verdure invernali)

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トスカーナ地方の伝統料理 リボッリータ

ナポリではもちろんのことイタリアでは野菜料理をよく食べます。暑い時期にはサラダ系が好まれますがグリル野菜、ソテー野菜、茹で野菜など温野菜は年中を通して食べられます。

そんな中、特に冬場はこの時期にしか出回らない野菜の種類が多く毎日のメニューを考えるのが楽しくなります。今日はそんなイタリアの冬野菜をご紹介しましょう。近年では日本でこれらの野菜を作ってくれる農家さんが増えましたので簡単に入手ができる様になり本当にありがたいことです。

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フリアリエッリ

フリアリエッリ(Friarielli)という野菜はイタリアでもナポリ地方でしか食べられていない珍しい青菜です。チーマディラーパと同属なのですが日本では菜の花やかき菜、高菜に似た野菜でアブラナ科に属します。生で食べることはなく、にんにくとオリーブオイルで柔らかくなるまでソテーして頂くのが一般的です。ナポリでは冬の風物詩にもなっているサルシッチャとの組み合わせで食べられることが多いです。サルシッチャのソテーの添え野菜として、またこの組み合わせをピッツァに乗せたり同じくスパゲッティで和えてと毎日のように食べるのです。ほろ苦さと独特の香りが素晴らしいです。

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フリアリエッリのソテー

スカローラ(Scarola)という野菜は聞いたこともないと思いますがエンダイブに似たキク科の野菜です。通常イタリア語ではインディーヴィア(indivia)といいます。見た目は大きなレタスのようで葉が肉厚でしっかりしていているので柔らかい中心部は生食しますが外側の緑色の濃い部分は茹でたりソテーしたりします。下の写真のようなリッシャ(Liscia)と呼ばれるものとリッチャ(Riccia)と呼ばれる縮れたものがあります。

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スカローラ

味わいはほろ苦くて味が濃くとても美味しいです。代表的な料理に白いんげん豆とスカローラのスープ(Fagioli e scarola)という柔らかく茹でたスカローラと白いんげん豆を合わせたスープがあります。この二つの食材はとても相性が良くまた塩とオリーブオイルのみというシンプルな味付けがとても美味しいです。

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白いんげん豆とスカローラのスープ

他にも黒オリーブとケイパーと共にソテーしたものをピッツァ生地で包んで焼いたピッツァ ディ スカローラ(Pizza di scarola)という料理も有名です。

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ピッツァ ディ スカローラ

カーヴォロネーロ(Cavolo nero)は日本では黒キャベツという名前で流通しており肉厚で固い葉なので生で食べることはありません。この野菜はまさに加熱して美味しくなる野菜の代表選手のようなものでミネストローネに入れたりお肉と共に煮込んだりすると甘みが出て美味しく頂けます。

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カーヴォロネーロ

トスカーナ地方の有名な料理にリボッリータ(Ribollita)というパンを使った野菜料理があります。一言でいえばミネストローネスープに固くなったパンを入れてスープの水分をパンに吸わせる料理なのですが、オーブンでじっくり焼いたリボッリータは野菜のうまみがパンと一体となって固いパンが最高の料理に生まれ変わります。

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リボッリータ

フィノッキオ(Finocchio)はセリ科の野菜でウイキョウとかフェンネルと呼ばれています。この野菜は日本ではまだまだメジャーではなくセロリやアニス系の香りがしてまるで歯磨き粉のようだと苦手な方もいらっしゃるようです。

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フィノッキオ

フィノッキはサラダに入れたりそのままスティックサラダとしても使われますが、オレンジとの相性がとても良いのでフィノッキオとオレンジのサラダ(Insalata di finocchio e arancia)がお勧めです。また加熱すると甘みが出て美味しくなりますのでベシャメルソースをかけてオーブン焼き(Finocchi gratinati)にします。このフィノッキオには野生種(Finocchietto Selvatico)と呼ばれるものがありその種のタネ(Semi di finocchietto selvatico)はサルシッチャ(Salsiccia)の中に入れたりプーリア地方のタラッリ(Taralli pugliesi)に入れることで有名です。

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フィノッキオのオーブン焼き

プンタレッレ(Puntarelle)という野菜はスカローラと同じように生食にしますが外側の長い葉は苦く固いので茹でるか炒めて食べます。イタリア全土ではカタローニャ(Catalogna)として知られておりチコリア(Cicoria)の仲間です。英語ではアスパラガス チコリー(Asparagus Chicory)と呼ぶそうです。

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プンタレッレ

チコリア

この野菜も苦みが強いのが特徴ですがローマ風のサラダ(Insalata di puntarelle)は格別の味です。作り方ですが外側の葉を取り去ると中が空洞になった茎が沢山あり、それを割ってナイフで薄く長くカットします。氷水につけて苦みを抜くとシャキッとした食感になります。それを生にんにく、アンチョビを刻んだもの、白ワインビネガー、エキストラバージンオリーブオイルで和えるのですがこの味付けはとても美味しいです。サラダとは言ってもワインが美味しくなる前菜です。

プンタレッレのサラダ