渡辺 陽一 ナポリ料理ブログ

郷土料理を愛してやまないイタリア料理人https://www.instagram.com/watanabe_yoichi_/

貧乏人のスパゲッティ(Spaghetti "poveriello")

今日は面白いネーミングのパスタ料理をご紹介しましょう。最近では日本でも紹介されることが多いようでググってみると結構な数のレシピが出てきますからご存知の方も多いのではないでしょうか?これもれっきとしたナポリの郷土料理なんです。

この料理の通称名はポヴェリエッロですが方言ではプヴェリエッロとなりSpaghetti a' puvurielloまたはSpaghetti do' puverielloとなります。イタリア語ではSpaghetti alla poverelloとかpoverellaまたSpaghetti del poverelloなどとも表記されています。もともと第二次世界大戦後の貧しい時代に庶民の間で生まれた料理とされていますが、味に関しては貧乏人向けではなくてなかなかの美味しさでビックリしてしまいます。材料が特別なものを使っていなくて貧しいということで付いた呼び名なんですね。この料理は冷蔵庫を覗いて何も食材がない時や夜食時などに手軽に小腹を満たせる手軽なパスタです。日本の卵かけご飯みたいなものでしょうか。

材料はとてもシンプルでスパゲッティ以外は卵、粉チーズ、塩、黒コショウ、オイルだけです。粉チーズはペコリーノチーズが一番適していますが家庭では手に入りにくいことでしょうからパルメザンチーズでも代用できます。またこれらの二つの粉チーズを混ぜて使う人もいます。オイルに関してはナポリでは伝統的にラードを使ってきましたが近年ではオリーブオイルの方が軽いという理由から代用されることが多くなっています。ただコクを出すことを考えればやはり絶対にラードの方が美味しいのです。

こんな話しをしているとふと炒飯を思い出しました。炒飯は普通サラダ油で作りますがラードを使うことで一気にコクが出て格段に美味しくなりますよね?この料理もそれと同じ理由でラードがあるとより美味しくなるのです。

さて話しは戻しましてこの料理のコンセプトは目玉焼きを作ってそこに茹でたスパゲッティとチーズ、黒コショウを加えて混ぜるだけという簡単なものですがそこにはポイントがあります。

まずその一ですが目玉焼きを半熟に作ることにあります。カルボナーラのように卵の黄身をスパゲッティにからめてクリーミーにさせたいので黄身は柔らかくなければなりません。また水分が少ないとパサパサになってしまいますので、茹で汁を少し加えるといいです。

そしてその二に目玉焼きのフライパンに茹で上がったスパゲッティを入れたら火を止めて和えることです。余熱で十分卵に火が入って麺とからみますので更に加熱をしない方が良いのです。万が一フライパンに麺を入れてからも加熱を続けると乾いてしまうだけでなく卵にも火が入り過ぎてぼろぼろになってしまうのです。

ちなみに現地のレシピには目玉焼きと茹で上がったスパゲッティをボウルで和えるというものがあるのですが、それなら絶対に失敗しないですね。

皆さんも簡単で美味しい貧乏人のスパゲッティを是非ご家庭で作ってみて下さい。

 

貧乏人のスパゲッティ材料

ペコリーノチーズまたはパルメザンチーズ

オリーブオイルまたはラード

黒コショウ

スパゲッティ