ナポリ菓子を語る時に私はよくパスティエラがナポリの代表選手だと話しますが、ババもそれと並んでとてもナポリらしいお菓子です。ババの起源は16~17世紀頃、クグロフをお酒で浸したポーランド生まれのバブカ(Babka Ponczowa)だといわれています。バブカと言っても近年話題となったチョコレートを練り込んだパンのバブカとは違います。その後「アリババと40人の盗賊」に出てくるアリババにちなんでそう呼ばれるようになり、更に18世紀にフランスのロレーヌ地方を経由してナポリの貴族に仕えるフランス人シェフ達、モンズのお陰でナポリに辿り着いたとされています。ナポリに伝わるまでにはかなりの年月がかかっているのですね。
*モンズ(Monsù)についてはナポリ風ラグーをご覧ください。
ババを一言でいえばブリオッシュ生地にラム酒のシロップを浸み込ませたものでフランス菓子のサヴァラン(Savarin)にとても良く似ています。サヴァランとの違いはその形状ぐらいに見えますね。このお菓子の魅力と言えば弾力のあるスポンジのような生地にラム酒のシロップがたっぷり浸み込ませてあって食感がとてもしっとりしていることでしょうか。甘いものが苦手な男性にもとても人気があります。ナポリではクリームのない生地だけのシンプルなものからカスタードクリームとアマレーナチェリーのシロップ漬けをトッピングしたものや生クリームとフルーツを飾った物などがあります。
ちなみにキノコ型でない丸いババをナポリではサヴァリン(Babà Savarin)とかパリジーナ(Parigina)などと呼びます(下のプルチネッラの写真をご覧ください)。近年ではココアを加えた黒い生地のものやラム酒ではなくリモンチェッロに浸したものなど様々なバリエーションが存在します。またお土産屋さんでは海外へ持っていくのに便利なミニババを漬込んだ瓶詰めも販売されています。
最後にナポリ人にとってのババには実はもう一つの意味があることをご紹介しましょう。それは「彼はババのようにいい人だ」と人を褒める時に使うことです。ババのような人?と思いますがナポリ人にとってババはそれぐらいみんなに好かれていて人々を幸せにしてくれるものということなのでしょう。よくイタリアではいい人のことをパンの様な人という言い方をしますがナポリではババになるわけです。私はこのナポリらしい表現がとても好きです。
ババ材料
強力粉
卵
マーガリン
イースト
砂糖
塩
ラム酒