渡辺 陽一 ナポリ料理ブログ

郷土料理を愛してやまないイタリア料理人https://www.instagram.com/watanabe_yoichi_/

ナポリ料理とは(La cucina napoletana)

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あさりのスパゲッティ

イタリア料理とは?といわれてまず皆さんが最初にイメージするのは、あさりのスパゲッティやピッツァ、カプレーゼといったものではないでしょうか?これってイタリア料理の代表的なものばかりですが実は全てナポリ発祥なんです。実際これらの料理はナポリでもよく食べられていて海辺のレストランではあさりのスパゲッティが一番人気ですしピッツァを毎日のように食べる人も少なくありません。どこの家でもにんにく、トマト、バジリコ、モッツァレラチーズといった食材は毎日のように使われています。でもほとんどの料理ににんにくを使うのに料理がにんにく臭いといったことはありません。それは他の食材を引き立てるために料理のベースに使っているからなのです。

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ピッツァ マルゲリータ

その昔私がナポリに住んでいる時によく耳にしたことで「ナポリ料理は決して贅沢な材料は使わないけどサポリート(Saporito)でしょう?」という言葉があります。サポリートとは「美味しい、味がいい」という意味なのですがこの言葉には素材がいい、調理法がシンプルでいいという意味が隠れているのです。実際ナポリの人たちは葉っぱ食い(ちなみにトスカーナ人は豆食い)と言われるほど葉物野菜が大好きなのですがその調理法はいたってシンプル、ただにんにくで炒めるだけといったものや揚げてトマトソースと和えるだけのものが多いのです。味付けもほとんどの場合が塩だけです。ナポリだけでなく南イタリア全土においてもいえることですが野菜をたくさん食べるということが特徴です。

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フリアリエッリのソテー

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ムール貝入りパスタ エ ファジョーリ

またトマトの使い方が上手なのもナポリ人の特徴だと思います。たとえが良くないかもしれませんがそれは日本人が醬油を使うのに似ていると私は思います。皆さんが和食を作る時に醤油の量を加減して使いますよね?お魚の煮つけには真っ黒になるぐらいたくさんの醤油を使い八方だしの時にはほんの少量しか加えないと思います。つまり醤油はその味や色を前面に出したくて使う場合と風味付けに使う場合があると思うのです。ナポリ人にとってのトマトは正にその感覚と同じでトマトをたっぷり使ったソースもあればあさりのスパゲッティの様にチェリートマトを何個か加えるだけという使い方もあるのです。その他、夏に収穫して春まで軒先に吊るして自然乾燥させて使うトマト(Pomodorini Piennolo del Vesuvio)があったりとナポリ人はトマト使いの達人です。

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ヴェスヴィオ産ピエンノロトマト

ではナポリ料理がどのように発展してきたのかを考えてみますとそこにはナポリが常に他国の支配を受けてきたという歴史的な背景が見えてきます。その中でも特にスペイン、フランスの支配が料理の変革に大きな影響を与えたといわれています。18世紀頃のスペイン系ブルボン家(Borbone delle Due Sicilie)のナポリ王を名乗っていたフェルディナンド4世(両シチリア国王フェルディナンド1世)の時代には貴族たちはこぞってフランス人シェフを雇っておりフランス料理文化がナポリに大きな影響を与えていたのです。その時代の置き土産として現在も多くのナポリ料理がフランス語に由来するものとなっています。

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ナスの船に乗ったじゃがいものニョッキ

例えばナポリ風ラグー(Ragù)はフランス語の[Ragout]から、ガットー・ディ・パターテ(Gattò di patate)は[Gateau]から、クロッケ・ディ・パターテ(Crocchè di patate)は[Croquette]から、サルトゥー・ディ・リーゾ(Sartù di riso)は[Sourtout]という様にフランス語からナポリ風の料理名に変わっていったのです。ナポリ料理史はとても興味深いと思います。

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パスティエラ

ミリアッチョ ナポレターノ(Migliaccio napoletano)

ミリアッチョはナポリ地方において2~3月頃のカーニバル時期によく作られるお菓子です。パスティエラ(Pastiera)キアッキェレ(Chiacchiere)と同じくカーニバル菓子としてこの時期のみに作られています。イタリアには宗教的な記念日やお祭りごとに合わせて作られる料理やドルチェが沢山あって面白いですね。ミリアッチョは分類としては焼き菓子なのですがケーキというよりは固めのプリンのようなしっとりした食感です。味はスフォリアテッラの中身の様な感じでしょうか。このミリアッチョですがあまりお菓子屋さんが販売するドルチェではないのでしょうか私は長年ナポリに住んでいましたがお菓子屋さんで見たことがありません。

ミリアッチョという名前はミリオ(Miglio)という言葉からきていて粟(あわ)やひえ、きびなどの雑穀を意味します。その昔はきびで作られていたのが時代と共にセモリナ粉に変わっていったのです。変わったレシピにはパスタを使ったものがあってカペッリーニ(Capellini)などのパスタをセモリナ粉と一緒に茹でたものもあったようです。それはまるでパスティエラ(Pastiera)の歴史と同じでパスティエラも昔はパスタを茹でたもので作っていたのです。

またその昔は豚の新鮮な血を使っていたこともあったようですが健康面への懸念から現在では使われなくなっています。(現在イタリアでは豚の血の販売は禁止されています。)カーニバル時期に食べる有名なサングイナッチョ(Sanguinaccio)というチョコレートクリームも本来は豚の血で作られていましたが同じように今では豚の血を使わなくなりました。

さてミリアッチョの作り方ですがとても簡単です。まず牛乳と水を入れた鍋にレモンやオレンジの皮、バニラビーンズを加えて火にかけます。沸騰寸前で火を止めたら牛乳にそれらの香りが移るまでしばらく置いておきます。その後フルーツの皮やバニラビーンズを取り出したらセモリナ粉を泡だて器で混ぜながら少しずつ加えていき、よく混ざったら再度鍋を火にかけてセモリナ粉を煮ます。煮あがったものはボウルなどに移して乾かない様にラップをしたら一度冷まします。

そこにお砂糖と卵を加えレモンとオレンジの皮をおろしたもの、シナモンを加えて風味をつけます。リコッタチーズを加える場合はここに加えます。後は好みでフルーツピールの砂糖漬けやレーズンなどを加えたらオーブンで焼くだけです。

近年はリコッタチーズを加えたレシピが多いのですが、元々はリコッタチーズの入っていないものが一般的でした。このシンプルなレシピの食感はまるで和菓子の“ういろう”のようですが、それはそれで好きという人も多いのです。食の好みはその人の育った環境や習慣によるものが多いので分からないものですね。味付けのバリエーションとしてパスティエラ(Pastiera)スフォリアテッラ(Sfogliatella)のようにオレンジの花の水(Acqua di fior d’arancio)を加える人もいますし変わったところではチョコレートを加えた黒いミリアッチョなんてものもあります。

今回は甘いミリアッチョ=ミリアッチョ・ドルチェ(Migliaccio dolce)を紹介しましたがミリアッチョには塩味のミリアッチョ・サラート(Migliaccio salato)なるものも存在します。しかもこちらのものがミリアッチョとしてはオリジナルです。この塩味のものはポレンタを練る時のコーンミール又はセモリナ粉(もしくは両方を混ぜて)を練ったものにサラミ類、豚脂を揚げたチコリ(Cicoli)、チーズなどを混ぜて作り、ケーキの型に入れて焼いたり、素揚げして食べられています。

ミリアッチョのフライ

しかし歴史をひもといてみると今のものとは大きく違っていました。その昔、貧しい人たちが豚の血にきびを混ぜたものを焼いてパンとして食べていたものが発祥とされているのです。その後、ケーキの様に焼いたものに変化していき貧しい人たちには栄養価の高い食べ物として重宝がられていたのですが、時の流れと共に教会が料理に血を使うことを嫌うようになったためその食べ方はできなくなりました。またきびはコーンミールに置き換わりその後、よりデリケートな味のセモリナ粉を使った今日の甘いレシピに変化していったのです。それらはナポリの修道女たちが考案したとされています。

今ではナポリでもあまり見かけなくなったミリアッチョ・サラートですが作ってみるとなかなか美味しいですよ。

 

ミリアッチョ材料

牛乳

セモリナ粉

リコッタチーズ

バター

レモンの皮

オレンジの皮

バニラビーンズ

シナモン

砂糖

 

以下、好みで

フルーツピール砂糖漬け(オレンジ、レモンなど)

レーズンのラム酒漬け

オレンジの花の水

靴職人風のパッケリ(Paccheri allo scarpariello)

イタリアには○○風、○○職人風という料理が多くあって面白いですね。例えばカルボナーラ(Carbonara)は炭焼き職人風、プッタネスカ(Puttanesca)は娼婦風、ペスカトーラ(Pescatora)は漁師風というように。今回は靴職人風=スカルパリエッロ(Scarpariello)という不思議なネーミングのパスタ料理をご紹介しましょう。

このスカルパリエッロはナポリ語の靴職人(Scarparo,Scarpariello)のことでイタリア語だとカルゾライオ(Calzolaio)です。

この料理のルーツは日曜日に家族が集まって食べた残りのラグー(ナポリ式の)を靴職人が翌日職場に持って行き休憩時間に食べたことに始まります。忙しい合間にパスタを茹でるだけで簡単に美味しい一品が出来るのでそれは重宝したことでしょう。

この料理のコンセプトはトマトソースのパスタに粉チーズとバジリコをたっぷりかけるというものです。では靴職人とチーズの関係は?ということになるのですがそこには当時の事情があったのです。この料理が生まれたとされているスペイン街(Quartieri spagnoli)ではお客さんが靴職人に修理代を支払う際、お金を持ち合わせない時にはチーズなどの食材を代金替わりに置いていったのだそうです。そんな習わしから靴職人たちの工房にはチーズが沢山貯蔵されていたんですね。だからチーズをふんだんに使えたということで靴職人風という名前がついたのだそうです。

しかし時代と共にラグーは生トマトに代わっていったそうです。女性の社会進出に伴い家庭でラグーを作る機会も減っていったことでしょうし、生トマトで作った方がよりヘルシーだからという現代の事情もあるのでしょう。ですから今では靴職人風のパスタというと生トマトを使ったものがメジャーになっています。使われるオイルも元々はラードでしたが今はオリーブオイルで作るのが一般的になっています。これは貧乏人のスパゲッティと同じ理由ですね。人によってはバターを使う人もいますがそれはあまり南イタリアっぽくないです。

この料理に使われるパスタは基本的にショートマカロニが多くパッケリやリガトーニ、ペンネ、ペンノーニ、ズィ―ティなどが人気ですが好みでロングパスタでも作られます。日本ではやはりスパゲッティが人気でしょうか。

Mezzi PaccheriとPaccheri

このソースは作る人によっても様々ではありますが大きなポイントが三つあります。

  • トマトは煮過ぎないで形が残る程度に仕上げること。
  • フレッシュなバジリコを沢山入れること。
  • 粉チーズをたっぷり加えることでクリーミーに仕上げること。

その他お好みで唐辛子を加えてもいいですし私がナポリで習った時のシェフはパンチェッタの細切りを少量入れていました。まあ動物性脂肪があった方がよりコクは出ますからね。その辺のアレンジには特に縛りはないようです。

 

さてパスタの作り方ですがとても簡単です。

まずパスタを茹でます。というのもこの料理はパスタを茹でている間にソースができるほど簡単だからなのです。パスタを茹で始めたらフライパンに潰したにんにくとオリーブオイルを入れて火をつけます。にんにくの香りが出てきたら半分にカットしたチェリートマトを加えさっと加熱したら塩味を調えます。そしてバジリコをちぎって加えたらもうソースは出来上がりです。パスタが茹で上がったらソースの入ったフライパンに入れ再度火をつけてよく和えます。そして火を止めたら粉チーズを加えます。チーズは加熱すると最初は溶けますがその後分離してしまいますので必ず火を消してから加えます。ここでパスタとチーズを和えもしも水分が足らないようであればパスタのゆで汁を加えます。これでチーズが溶けてクリーミーに仕上がります。最後にまたバジリコをちぎって加えます。これで完成です!

チーズはペコリーノを使うのが一般的ですが味が苦手な人はパルミジャーノで代用する人もいますし、ナポリ郊外のヴィーコ・エクエンゼ(Vico Equense)やソレント(Sorrento)産のプロヴォローネ・デル・モナコ(Provolone del Monaco)をおろして使う人もいます。確かにこちらの方がよりクリーミーに仕上がりますね。

このブログを書いていてスカルパリエッロをWeb検索してみると結構な件数が紹介されていました。思いのほかいろんな人が紹介しているんですね。

靴職人でも簡単にできる料理だという話しや、

靴職人の仕事のように鍋底を絶え間なく混ぜるから靴を磨いたように見えるからとか、

美味しくて食べた後のお皿がピカピカで靴を磨いたようだから、

などと色々あって本当に面白いです。

ちなみにイタリア語ではパンでお皿を拭くことをスカルペッタ(Scarpetta)=小さな靴といいます。大昔の人がお皿の上のパンの切れ端を小さな靴に例えたものなのですがイタリア人的な表現の仕方は本当にユニークですね。

 

パッケリの靴職人風材料

チェリートマト

にんにく

バジリコ

粉チーズ(ペコリーノ、パルミジャーノ、プロヴォローネ・デル・モナコなど)

パッケリ(またはリガトーニ、ペンネ、ズィ―ティなどのショートパスタ)

貧乏人のスパゲッティ(Spaghetti "poveriello")

今日は面白いネーミングのパスタ料理をご紹介しましょう。最近では日本でも紹介されることが多いようでググってみると結構な数のレシピが出てきますからご存知の方も多いのではないでしょうか?これもれっきとしたナポリの郷土料理なんです。

この料理の通称名はポヴェリエッロですが方言ではプヴェリエッロとなりSpaghetti a' puvurielloまたはSpaghetti do' puverielloとなります。イタリア語ではSpaghetti alla poverelloとかpoverellaまたSpaghetti del poverelloなどとも表記されています。もともと第二次世界大戦後の貧しい時代に庶民の間で生まれた料理とされていますが、味に関しては貧乏人向けではなくてなかなかの美味しさでビックリしてしまいます。材料が特別なものを使っていなくて貧しいということで付いた呼び名なんですね。この料理は冷蔵庫を覗いて何も食材がない時や夜食時などに手軽に小腹を満たせる手軽なパスタです。日本の卵かけご飯みたいなものでしょうか。

材料はとてもシンプルでスパゲッティ以外は卵、粉チーズ、塩、黒コショウ、オイルだけです。粉チーズはペコリーノチーズが一番適していますが家庭では手に入りにくいことでしょうからパルメザンチーズでも代用できます。またこれらの二つの粉チーズを混ぜて使う人もいます。オイルに関してはナポリでは伝統的にラードを使ってきましたが近年ではオリーブオイルの方が軽いという理由から代用されることが多くなっています。ただコクを出すことを考えればやはり絶対にラードの方が美味しいのです。

こんな話しをしているとふと炒飯を思い出しました。炒飯は普通サラダ油で作りますがラードを使うことで一気にコクが出て格段に美味しくなりますよね?この料理もそれと同じ理由でラードがあるとより美味しくなるのです。

さて話しは戻しましてこの料理のコンセプトは目玉焼きを作ってそこに茹でたスパゲッティとチーズ、黒コショウを加えて混ぜるだけという簡単なものですがそこにはポイントがあります。

まずその一ですが目玉焼きを半熟に作ることにあります。カルボナーラのように卵の黄身をスパゲッティにからめてクリーミーにさせたいので黄身は柔らかくなければなりません。また水分が少ないとパサパサになってしまいますので、茹で汁を少し加えるといいです。

そしてその二に目玉焼きのフライパンに茹で上がったスパゲッティを入れたら火を止めて和えることです。余熱で十分卵に火が入って麺とからみますので更に加熱をしない方が良いのです。万が一フライパンに麺を入れてからも加熱を続けると乾いてしまうだけでなく卵にも火が入り過ぎてぼろぼろになってしまうのです。

ちなみに現地のレシピには目玉焼きと茹で上がったスパゲッティをボウルで和えるというものがあるのですが、それなら絶対に失敗しないですね。

皆さんも簡単で美味しい貧乏人のスパゲッティを是非ご家庭で作ってみて下さい。

 

貧乏人のスパゲッティ材料

ペコリーノチーズまたはパルメザンチーズ

オリーブオイルまたはラード

黒コショウ

スパゲッティ

リンゴのストゥルーデル(Strudel di mele)

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今回はナポリ菓子ではありませんが今日イタリア全土で人気のある北イタリアの郷土菓子ストゥルーデルをご紹介します。このお菓子は一般的にはオーストリア菓子として有名なのですがその発祥を探ると何と実はトルコにあるようなのです。それはバクラヴァ(Baklava)というお菓子なのですが、こちらは薄い生地の間に刻んだナッツ類をはさんで重ね焼きした後シロップをかけたものですので一見ストゥルーデルとはあまり似ていないように見えますが、おそらく寒い地域において身近にあったリンゴを入れたものに変化していったものと考えられています。そしてオーストリアに定着した後、近隣のりんごの産地である南チロル地方からイタリアのトレンティーノ・アルト・アディジェ州、フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州、ヴェネト州へと広がって行ったのです。では何故トルコからオーストリアに伝わったのかといいますと、それはかつてオーストリアがハンガリー帝国の支配下にありそのハンガリー帝国はほぼ200年間、オスマン帝国の支配下にあったからなのです。トルコの食文化がこのように伝わっていったのは興味深いですね。

さてオーストリアもイタリアもStrudelは全く同じ綴りなのですがドイツ語ではシュトゥルーデル、イタリア語ではストゥルーデルと発音が異なりオーストリアやドイツでリンゴのストゥルーデルはアプフェルシュトゥルーデル(Apfelstrudel)と呼ばれています。またストゥルーデルの意味は「渦巻き」とか「ぐるぐる巻き」という意味で生地を巻いて作ることからそう呼ばれるようになりました。北イタリアでは伝統的にレネッテ(Renette)というリンゴ(原産国はフランス)を使いますが近年になってレネッテは人気が出て高くなってしまいました。よって現在はより安価なゴールデンデリシャス(Golden delicious)で作られることが多いようです。

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Mele renette レネッテ

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Mele Golden delicious ゴールデンデリシャス

その作り方は小麦粉で練った生地を薄く伸ばしてリンゴを刻んだものを包んでオーブンで焼くというシンプルなものですが「生地の下に新聞紙を置いて読めるぐらいまで薄く伸ばす」というのが決まり文句の様で大抵どのレシピを見てもそう書いてあります。生地を伸ばす時は最初、麵棒を使ってある程度薄くなるまで伸ばします。そして途中から手の甲を使って左右に広げる様に伸ばしていきます。こうすることで部分的に生地が薄くならない様に伸ばすことが出来るのです。そして大きく伸ばしたら布の上に生地を広げてその上に具材を乗せます。

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また生地にリンゴのフィリングを乗せる前に溶かしバターを生地全体に塗ることで焼いた時にパイの様なサクサクの食感になります。生地にバターを塗ったらフィリングの下にはパン粉やビスケットを砕いたもの、ケーキクラムなどを敷いてリンゴの水分を吸わせます。これは生地がリンゴの水分で湿ってしまうのを防ぐためです。

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そしていよいよフィリングを巻くのですがここで下に敷いた布が威力を発揮します。それはまるで海苔巻きを作るようにくるくると巻いていけば直接生地に触ることなくフィリングを巻くことが出来るのです。

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提供時には粉砂糖をかけてホイップクリームやバニラソースまたバニラアイスクリームを添えるのが定番です。温かいうちに提供するのも良し、また冷たく冷やしても良しと季節や好みに合わせて提供します。

ちなみにイタリアではリンゴのストゥルーデル以外にもナシやプラム、チェリー、桃、あんずなどのバリエーションもあります。また料理としてのストゥルーデルもありほうれん草やキャベツ、アスパラ、ズッキーニ、じゃが芋などの野菜とチーズ、ハムなどで作った塩味のものもあります。それらは前菜としてまた野菜料理として頂きます。

 

材料

生地:

小麦粉

オリーブオイル

 水

 卵

 塩

 

フィリング:

リンゴ

砂糖

レーズン

シナモン

レモン皮、果汁

クルミ、松の実(お好みで)

アマレットリキュール、ラム酒(お好みで)

ケーキクラム、パン粉または砕いたビスケット

バター

パスクア(Pasqua)

パスクアの卵(Uova di Pasqua)

パスクア(Pasqua)とはイタリア語で「復活祭」のことで英語のイースター(Easter)にあたります。キリストが十字架にかけられて亡くなり、3日後に復活したことを祝うお祭りです。春分のあと最初の満月の次の日曜日と定められていますので、毎年大体3月下旬から4月中旬の日曜日になります。キリスト教徒の多いイタリアにおいてキリストの誕生を祝うクリスマス(Natale)はもちろん大切な祝日ですが、それと同じ位キリストの復活した日もとても大切なのです。

古くから“クリスマスは家族と一緒に、パスクアは好きな人と一緒に ”(Natale con i tuoi, Pasqua con chi vuoi) とうことわざがあるほど、この二つのお祝い事は重要なのですね。

この時期になるとパスクアの卵(Uova di Pasqua)と呼ばれるカラフルな包装をした様々な大きさの卵型チョコレートが町中のお菓子屋さんやスーパーに並ぶのですが、中は空洞になっていておもちゃやお菓子が入っているので子供たちは割るのが楽しみでワクワクします。

さてパスクアに食べられる食事についてお話しましょう。イタリアの地方によっても違いはありますが伝統的にゆで卵や卵料理、仔羊肉を食べることが多いです。中には知り合いを通じて貴重な山羊を手に入れる人もいて回りからは尊敬のまなざしで見られます。

ナポリではミネストラ・マリタータ(Minestra maritata)という手の込んだスープ、そして仔羊とグリーンピースを煮込んで卵で和えたカーチョ・エ・オーヴォ(Cacio e ovo)というメインディッシュがあります。

ミネストラ マリタータ(Minestra maritata)

カーチョ・エ・オーヴォ(Cacio e ovo)

またカザティエッロ(Casatiello)という卵、ハム類、チーズの入ったお総菜パンもこの時期よく登場します。そしてお菓子では何と言ってもパスティエラ(Pastiera)ですね!

カザティエッロ(Casatiello)

パスティエラ(Pastiera)

またイタリア全土において復活祭のお菓子といえばコロンバ(Colomba)と呼ばれるハトの形をしたパネットーネに似たパン菓子が有名ですが日本ではあまり馴染みがないですね。

コロンバ(Colomba)

ちなみに復活祭の翌日の月曜日はパスクエッタ(Pasquetta)=小さなパスクアと呼ばれる日で家族や親戚、友人達と一緒にピクニックに行く日とされておりイタリアでは祝日となっています。

ミネストラ マリタータ(Minestra maritata)

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イタリア料理においてミネストラというとスープ類のことを指します。これらはイタリア全土で食べられており豆や野菜だけで作られたスープからお米やパスタを入れたものまで様々なものがありますが有名なところではミネストローネスープもその仲間です。今日はその中でもちょっと変わったナポリのスープについてお話ししましょう。まずこのミネストラ マリタータというスープ名ですが直訳すると結婚したスープという意味になります。英語ではウエディング スープ(Italian Wedding Soup)と呼ばれているそうです。ただしこのスープは結婚式に食べられるものではありません。家族のお祝いがある時やクリスマス、復活祭パスクアの時期のみに食べられているナポリ料理の中でも特に古い歴史を持った料理の一つです。

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それでは何故結婚したスープなのかと言いますとそれは肉類と野菜との素晴らしい相性を結婚したと解釈したからなのです。このスープのコンセプトは鶏のブイヨン、牛のブイヨン、豚のブイヨンの出汁を別々にとって合わせたものに柔らかく茹でたお肉やサルシッチャ、サラミ類を食べやすく切って加え、何種類もの葉野菜と一緒に煮るというものです。手間はかかりますが本当に美味しく贅沢なスープだと思います。イタリア料理に関心の深い人でしたらロンバルディア州の郷土料理カッソーラ(cassoeula)をご存じだと思いますが、どちらもその昔スペイン人が伝えたのが起源だと言われています。この二つの料理は豚肉の色んな部位を煮込んだ料理として似ていますが違いとしてはミネストラ マリタータには様々な葉野菜が使われるのに対してカッソーラはチリメンキャベツのみということでしょうか。

f:id:partenopetokyo:20220331005128j:plainさてミネストラ マリタータに使われる葉野菜はいくつかあるのですが実は決まったものではなくて各自、手に入れやすいものを使うことになっています。例えば郊外の人でしたらでしたら野生種のチコリアを野原で摘んでくることが出来ますのでそれを入れるという具合にです。もちろん農家さんも野生種の葉物は人気なことを知っていますのでうまく仕入れては市場で販売しています。

チコリア(Cicoria)

一般的な野菜はスカローラ(scarola)、ボッラージネ(borragine)、チコリア(cicoria)、プンタレッレ(puntarelle)、トルツェッレ(torzelle)、葉ブロッコリー(broccoli di foglia)、チリメンキャベツ(verza)などイタリアならではの野菜も多いです。日本では菜の花やかき菜、黒キャベツ、エンダイブ、ふだん草などで代用しても良いでしょう。これらの野菜は別々に茹でておきます。

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お肉ですがその昔はさまざまな種類のサルシッチャ(salsicce)やソプレッサート(soppressate)、パンチェッタ(pancetta)、ハム(prosciutto)、子牛の鼻(muso di vitello)、豚足(piedini di maiale)、塩漬け豚舌(lingue salate di maiale)、乾肉(carne secca)、豚の耳(orecchie di maiale)が好まれましたが、現在では鶏肉(pollo)、牛肉の筋肉(muscoli di manzo)、牛筋(nervetti di manzo)、サルシッチャ(salsiccia)、豚のスペアリブ(tracchiulelle)、豚の皮(cotiche di maiale) 、豚の耳(orecchie di maiale)、サラミ(salame)などが好まれるようです。また豚肉類(豚肉とサルシッチャ、豚耳、サラミなど)のみで作るやり方もあり私はこちらのレシピで作っています。お肉類は柔らかく茹でたら一度冷まして食べやすい大きさにカットします。そして食べる時に葉野菜と一緒にブイヨンで温めて塩味を整えます。

ちなみにブイヨンは一晩冷蔵庫で冷やします。冷やすことで表面に脂分が浮いて固まりますのでそれを全て取り去ります。そうすることでさっぱりしたブイヨンになるのです。

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最後にパルメザンチーズの皮の部分、カチョカヴァッロチーズやペコリーノチーズの小さなかけらも加えることでこのスープは完成します。チーズ片を一緒に煮ることでスープにいい風味がつくのです。そして好みで黒コショウをかけて頂きます。

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材料

鶏のブイヨン

牛のブイヨン

豚のブイヨン

豚肉スペアリブ

豚耳

サルシッチャ

ナポリサラミ

牛筋

スカローラ

チコリア

プンタレッレ

葉ブロッコリー

カーヴォロネーロ

チリメンキャベツ

パルメザンチーズの固い部分

カチョカヴァッロやペコリーノチーズ

黒コショウ

溺れダコの煮込み(Polpo affogato)

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今日はナポリでも人気のタコの煮込み料理についてお話ししましょう。ナポリにはタコの煮込み料理がいろいろあるのですが、これがどれもトマトで煮込む調理法ばかりなので仕上がりに大差はないようです。単なる呼び名の違いだけなのかな?と思ってしまいます。トマトを使わない煮込みもあっていいようなものですがそこはトマト好きな国民性なのでしょう必ずと言っていいほどトマトが入っています。ちなみによく見かけるタコのメニューは以下のものです。

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1)溺れダコの煮込み(Polpo affogato)

2)タコのキャセロール煮込み(Polpo in casseruola / Polpo in umido)

3)タコのルチーア風煮込み(Polpo alla luciana)です。

1)のネーミングですがタコがトマトの中で柔らかく煮えたのをタコが溺れたとする表現は面白いですね。ナポリ語のメニュー名は‘O purpetillo affugatoです。

2)のキャセロール煮も基本的には1)と同じような調理法でこれといった縛りはないです。あえて言えばトマトを入れなくてもこのネーミングは使えるということぐらいでしょうか。ただ実際のところ1)も土鍋で仕込むことが多いので結局は同じなのかな?という感じです。

3)ですがこれにはトマトと黒オリーブ、ケイパーを入れるのがお決まりです。このルチーア風という名前はナポリ湾にあるサンタルチーア地区(Borgo di Santa Lucia)に由来していて、その昔この地区ではタコ壺を使ったタコ漁が盛んに行われていたそうです。あの卵城(Castel dell’Ovo)がある辺りです。また茹でたタコを食べさせる屋台がたくさんあったといわれています。そんなことからこの料理にこの地区の名前がついたのでしょう。

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さて私は現地で何度か見たのですが昔からナポリではタコを茹でる時に面白いことをします。それは鍋にコルクを入れることです。まあおまじないのようなものですが庶民はタコが柔らかくなると本気で信じているようでその昔私がレストランでタコを茹でていると掃除のおばちゃんがいつの間にか何個かのコルクを鍋の中に入れていました。そして僕を見てニヤッと笑ったのです!きっと何も知らない外国人の僕だからと教えてくれたのでしょう。そんな時はお気遣いありがとうとサラッとお礼を言っておきました。今では懐かしい思い出です。でもコルクを入れるよりもタコをしっかり叩きつけて筋肉の繊維を断ち切ってから加熱するのが柔らかくする秘訣なんですがね。

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タコの煮込みの作り方ですがお鍋(できれば土鍋)にオリーブオイルとにんにく、唐辛子を炒めて香りを出したところに大きめにカットしたタコを入れます。イイダコや小さいタコの場合はそのままで。タコをさっとソテーをしたら好みで白ワインを入れてその後トマトを加えるのですがここで香り付けのためにイタリアンパセリの茎を入れる人もいます。他にはタコをソテーせずに全ての材料を一緒に鍋に入れて煮るというやり方もあります。あとはタコが柔らかくなるまで弱火でじっくり煮るだけなのですが最初から塩は加えません。タコはそれなりの塩分を持っていることが多いので後で調整します。また弱火でゆっくり時間をかけて煮ることが大切で、好みで黒オリーブ(あればガエータオリーブ)やケイパーを加えます。

現地の言い伝えではタコは自分の水分で柔らかくなるといわれています。すなわちタコはたくさん水分を持っているので煮る時にトマトを入れても水は加えないで蒸し煮にするということなのです。また煮上がるまで蓋を開けないという掟もありますがこれは途中、煮具合を見るために開けてしまうのでなかなか守れません。

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それとこのタコの煮込みには必ずといって良いほどパンが添えられます。パンをさっと炙ったトースト(Crostini)を添えたりパンを素揚げしたもの(Crostini fritti)をタコの下に敷いたりします。美味しいソースをパンに吸わせて一緒に頂く工夫なんですね。またこのタコの煮込みソースはパスタで和えてもとても美味しいです。

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ここまでタコの煮込みの話しをしてきましたが古いレシピを見ているとその昔タコのルチーア風(Polpo alla luciana)というのはタコを茹でてオリーブオイルとレモン汁でマリネしたものだったようです。現在ではそれはタコのサラダ(Insalata di polpo又はPolpo all’insalata)と呼ばれています。いつからルチーア風がトマト煮になったのかはよく分かりませんが、いずれにしてもタコはサラダでもトマトで煮てもどちらも美味しいですね。

今ではなくなってしまった冬の風物詩としてその昔ナポリ中央駅の周辺にタコのスープを飲ませる屋台がありました。スープといってもタコのゆで汁に足の小切れを一本とコショウを入れただけのシンプルなものなのですが、美味しくて身体が温まる素晴らしい文化でした。これも私が初めてナポリに行った頃の懐かしい思い出です。

 

溺れダコの煮込み

材料

タコ

トマト(生・ホールトマトなど)

にんにく

イタリアンパセリ

唐辛子

オリーブオイル

黒オリーブ(あればガエータオリーブ)・ケイパーお好みで

ズッペッタ(Zuppetta napoletana)

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このお菓子はナポリ菓子の代表選手としてどこのお菓子屋さんにも必ずと言ってよいほどショーケースに並んでいます。ナポリではズッペッタと呼ばれておりシロップに浸したという意味なのですが何故かナポリ以外の地方ではそう呼びません。一般的にはディプロマティカ(Torta diplomatica)と呼ばれるケーキで使われるリキュールもその地方によって、また作る人によって異なりますが、ナポリではストレーガリキュール(Liquore Strega)=魔女のリキュールというベネヴェント(Benevento)地方の黄色いリキュールが必ず使われます。またクリームもナポリではカスタードクリームのみを使うのが伝統的なやり方ですがその他の地方ではカスタードクリームに生クリームを混ぜたり、チョコレートクリームやリコッタチーズクリームなどを使う人もいます。シロップにはアルケルメス(Alchermes)、アマレット(Amaretto)、リモンチェッロ(Limoncello)、ラム酒(Rhum)なども使われるようです。

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私は初めてナポリでこのケーキを見た時、何と簡単で手間のかかっていないものだなと過小評価していたのですが食べてみると今まで味わったことのない感動を覚えました。上下にサクッとしたパイ生地があり中にはリキュールを効かせたしっとりしたスポンジ生地が挟んであるだけなのですがその食感が面白くまたこのリキュールがナポリっぽいんですね。ちなみにナポリ式はパイ生地を上下2枚でスポンジ生地を挟みますが他の地方では3枚(その場合スポンジ生地が2層)使うこともあります。

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材料は見て分かる通りシンプルでパイ生地、スポンジ生地、カスタードクリーム、ストレーガリキュール入りシロップ、アマレーナチェリーのシロップ漬けです。

普通このようなケーキですとスポンジ生地やパイ生地を細かくしたもの(ケーキクラム)で周りを覆ったりすると思うのですがナポリ式は何もしません。ただ端を切り落としておしまいです!もっともズッペッタはそもそも一人前にカットして販売しますので切りっぱなしのままでいいんですけどね。

しかし本当に素朴で素敵なケーキですよ。パッと見あまり華のないお菓子かも知れませんが、ナポリ好きな人には絶対にお薦めできる一品です。

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ズッペッタ材料

スポンジ生地

パイ生地

カスタードクリーム

ストレーガリキュール入りシロップ

ァマレーナチェリーのシロップ漬け

粉糖(飾り用)

ポルペッテのラグー煮(Polpette al sugo)

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世界中どこにでもある家庭料理が挽肉料理です。価格的にも手ごろでお肉の種類も好みで変えることが出来ますし、小さなミートボールからミートローフのような見栄えのする料理も作ることが出来てとても便利ですね。ナポリにおいては小さなミートボールをラザーニャやマカロニのティンバッロの中に入れたり、また大きめに作ってメインディッシュにしたりします。ちなみにミートボールを意味するPolpetta(ポルペッタ)は単数形で複数形はPolpette(ポルペッテ)になります。小さなミートボールはPolpettini(ポルペッティーニ)です。よく似た単語にPolpetti(ポルペッティ)というのがありますがこれは小さいタコのことです。タコはPolpo(ポルポ)ですのでその小さいものがPolpettiとなります。またPolipo(ポリポ)という表記もよく見かけますがイタリア語でタコはPolpoが正解です。ただPolipoも方言的な使い方として一般的ですので間違いではありません。

ナポリにおいて通常ミートボールはナポリ風ラグーで煮るもので私はそれ以外の調理法を見たことがありません。もちろん素揚げしてそのまま食べても美味しいのでしょうが、やはりナポリ人にとってラグーは家庭料理の基本なのでしょう、ポルペッテといえば誰しもがこのラグー煮を想像します。

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使われるお肉は一般的に合い挽き肉や牛挽き肉が多いです。それ以外の材料で大きな割合を占めるのがパンです。日本で挽き肉料理を作る時は大抵パン粉(生・乾燥)を使いますがそこはイタリア、古くなったパンを水に浸して柔らかくしたものをしっかり水を切って使うのです。ちなみにパンを乾燥させたものはチーズおろしで細かくしてパン粉にします。これはとても理にかなっていますね。さすが粉文化の民族だと感心します。イタリアでは皆が毎日のように焼き立てのパンを買います。当然ながらその日に食べる分だけを買うことはできませんので、結果毎日少しずつ残ってしまいます。そんな再利用方法としてもこの挽き肉料理は大切なのです。

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その他、挽き肉とパン以外に入れるものはにんにくとイタリアンパセリの粗切り、卵、パルメザンチーズ、そして味付けに塩・コショウです。これでミートボールの生地は出来上がりですがナポリではこれにレーズンを水で戻したものと松の実を加えます。残念ながら日本ではレーズンを料理に使うとあまり人気がありません。甘いのでおかずには受け入れがたいのでしょうか。そんな理由から私はポルペッテを作る時にレーズンは入れません。もちろんお好きな方は入れればより本格的になります。是非試してみてください。

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さてできた生地は丸く成形して一度中温の油で素揚げします。その後ラグーの中でさっと煮れば仕上がりなのですがこの生地を揚げないで直接ラグーの中に入れて煮るという方法もあります。一度素揚げしてから煮た方が煮崩れしませんし香ばしい味わいも加わりますのでより美味しくなるのですが、健康上の理由から揚げることを避ける人もいるのです。もちろんそれでも美味しく頂くことはできます。パンのお陰でしっとりと美味しく出来たミートボールをお肉の出汁のきいたラグーで和えたナポリのポルペッテを是非お召し上がりください。

 

ポルペッテのラグー煮材料:

ナポリ風ラグー

挽肉

古くなったパン

パルメザンチーズ

にんにく

イタリアンパセリ

塩、コショウ

レーズン、松の実(お好みで)

イタリアの冬野菜(Verdure invernali)

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トスカーナ地方の伝統料理 リボッリータ

ナポリではもちろんのことイタリアでは野菜料理をよく食べます。暑い時期にはサラダ系が好まれますがグリル野菜、ソテー野菜、茹で野菜など温野菜は年中を通して食べられます。

そんな中、特に冬場はこの時期にしか出回らない野菜の種類が多く毎日のメニューを考えるのが楽しくなります。今日はそんなイタリアの冬野菜をご紹介しましょう。近年では日本でこれらの野菜を作ってくれる農家さんが増えましたので簡単に入手ができる様になり本当にありがたいことです。

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フリアリエッリ

フリアリエッリ(Friarielli)という野菜はイタリアでもナポリ地方でしか食べられていない珍しい青菜です。チーマディラーパと同属なのですが日本では菜の花やかき菜、高菜に似た野菜でアブラナ科に属します。生で食べることはなく、にんにくとオリーブオイルで柔らかくなるまでソテーして頂くのが一般的です。ナポリでは冬の風物詩にもなっているサルシッチャとの組み合わせで食べられることが多いです。サルシッチャのソテーの添え野菜として、またこの組み合わせをピッツァに乗せたり同じくスパゲッティで和えてと毎日のように食べるのです。ほろ苦さと独特の香りが素晴らしいです。

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フリアリエッリのソテー

スカローラ(Scarola)という野菜は聞いたこともないと思いますがエンダイブに似たキク科の野菜です。通常イタリア語ではインディーヴィア(indivia)といいます。見た目は大きなレタスのようで葉が肉厚でしっかりしていているので柔らかい中心部は生食しますが外側の緑色の濃い部分は茹でたりソテーしたりします。下の写真のようなリッシャ(Liscia)と呼ばれるものとリッチャ(Riccia)と呼ばれる縮れたものがあります。

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スカローラ

味わいはほろ苦くて味が濃くとても美味しいです。代表的な料理に白いんげん豆とスカローラのスープ(Fagioli e scarola)という柔らかく茹でたスカローラと白いんげん豆を合わせたスープがあります。この二つの食材はとても相性が良くまた塩とオリーブオイルのみというシンプルな味付けがとても美味しいです。

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白いんげん豆とスカローラのスープ

他にも黒オリーブとケイパーと共にソテーしたものをピッツァ生地で包んで焼いたピッツァ ディ スカローラ(Pizza di scarola)という料理も有名です。

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ピッツァ ディ スカローラ

カーヴォロネーロ(Cavolo nero)は日本では黒キャベツという名前で流通しており肉厚で固い葉なので生で食べることはありません。この野菜はまさに加熱して美味しくなる野菜の代表選手のようなものでミネストローネに入れたりお肉と共に煮込んだりすると甘みが出て美味しく頂けます。

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カーヴォロネーロ

トスカーナ地方の有名な料理にリボッリータ(Ribollita)というパンを使った野菜料理があります。一言でいえばミネストローネスープに固くなったパンを入れてスープの水分をパンに吸わせる料理なのですが、オーブンでじっくり焼いたリボッリータは野菜のうまみがパンと一体となって固いパンが最高の料理に生まれ変わります。

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リボッリータ

フィノッキオ(Finocchio)はセリ科の野菜でウイキョウとかフェンネルと呼ばれています。この野菜は日本ではまだまだメジャーではなくセロリやアニス系の香りがしてまるで歯磨き粉のようだと苦手な方もいらっしゃるようです。

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フィノッキオ

フィノッキはサラダに入れたりそのままスティックサラダとしても使われますが、オレンジとの相性がとても良いのでフィノッキオとオレンジのサラダ(Insalata di finocchio e arancia)がお勧めです。また加熱すると甘みが出て美味しくなりますのでベシャメルソースをかけてオーブン焼き(Finocchi gratinati)にします。このフィノッキオには野生種(Finocchietto Selvatico)と呼ばれるものがありその種のタネ(Semi di finocchietto selvatico)はサルシッチャ(Salsiccia)の中に入れたりプーリア地方のタラッリ(Taralli pugliesi)に入れることで有名です。

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フィノッキオのオーブン焼き

プンタレッレ(Puntarelle)という野菜はスカローラと同じように生食にしますが外側の長い葉は苦く固いので茹でるか炒めて食べます。イタリア全土ではカタローニャ(Catalogna)として知られておりチコリア(Cicoria)の仲間です。英語ではアスパラガス チコリー(Asparagus Chicory)と呼ぶそうです。

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プンタレッレ

チコリア

この野菜も苦みが強いのが特徴ですがローマ風のサラダ(Insalata di puntarelle)は格別の味です。作り方ですが外側の葉を取り去ると中が空洞になった茎が沢山あり、それを割ってナイフで薄く長くカットします。氷水につけて苦みを抜くとシャキッとした食感になります。それを生にんにく、アンチョビを刻んだもの、白ワインビネガー、エキストラバージンオリーブオイルで和えるのですがこの味付けはとても美味しいです。サラダとは言ってもワインが美味しくなる前菜です。

プンタレッレのサラダ

 

手長エビのリングイーネ(Linguine agli scampi)

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スカンピ(Scampi)というエビは日本でもかなり認知度が高いので皆さんもご存じだと思います。イタリア料理店やフランス料理店、スペイン料理店では欠かせない高級食材の一つです。イタリア語ではスカンピ(Scampi)、フランス語ではラングスティーヌ(Langoustine)、

英語ではリトル・ロブスター(Little Lobster)又はノルウェーロブスター(Norway Lobster)とも呼ぶようです。

日本においては赤座(あかざ)エビがよく似ています。赤座と呼ぶのは体の色合いがアカザ科の植物の若い葉の色合いに似ているためだそうです。赤座エビは関東から九州まで全国に生息していてその身は甘みが強く、生で食べても火を通しても美味しいので調理法を選びません。ミソもデリケートな味わいで伊勢エビよりも美味しいという人もいるぐらいです。

このエビ、大変悩ましいことに手長エビと呼ぶのは実は間違っているのです。手長エビというのは本来、淡水に生息する別の種類のエビだからなのです。よく居酒屋にあるあれです。とは言っても一般的に手長エビといえば誰もがスカンピのことを思い浮かべるということから、どこのレストランでも手長エビと呼んでいるのが実情なのです。

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さてスカンピのリングイーネはナポリ料理の中でも花形といえる一皿でしょう。海辺の高級レストランには必ずといってよいほどメニューにありますし結婚式などにもよく登場します。ある意味イタリアにおいてもそこそこ値段がする料理ですので滅多に食べることのないご馳走といえるのです。この料理をいつも食べている人は本当に幸せですね!

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作り方はとてもシンプルで潰しにんにくをオリーブ油で炒めて半分に割ったスカンピをさっと焼きます。そしてブランデーや白ワインでフランベしてチェリートマトを入れるかトマトソースを加えてさっと煮るというものです。ナポリではあさりのスパゲッティと同じくトマトが少量入るのが一般的ですが、もちろん好みでトマトなしにもできます。ちなみに私はたっぷりのトマトを加えてスカンピを煮込むやり方が好きです。

しかしここで問題となることがあります。スカンピの出汁をソースに移したいと思うなら少し煮ることが必要となりますが、煮てしまうと身が固くなってしまうということです。ですから身を固くしたくないという理由であまり加熱しないでフライパンから出してしまう人も多いのですが、それでは肝心のパスタが美味しく頂けません。

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そんな理由から私はスカンピの頭と身を切り離して調理します。最初は一緒に焼くのですがフランベをしたあと身の方は取り出しておきます。そして頭を煮込んでソースが美味しくなったらまた身をフライパンの中に戻すのです。ちなみにナポリではそんな面倒なことはしません。半分に割ったスカンピは最初から最後までフライパンの中に入れておくのが一般的です。やはりパスタを美味しく食べることが優先なので身が固くなることには目をつぶるのでしょうね。あと面白いことにこの料理は誰もがリングイーネで作ります。もちろんスパゲッティでもいいようなものですがイタリアにおいてそのメニューは見たことがありません。それだけリングイーネとの相性がいいのでしょうね。

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近年ではスカンピの需要が増えたことで価格が一気に上がってしまいました。おそらく私が若いころの2倍ぐらいにはなっているのではないでしょうか?お客様に安く提供できないのは何とも寂しいことです。こんな素晴らしい料理をもっと手軽に食べてもらいたいものです。

 

手長エビのリングイーネ材料

スカンピ

トマト(チェリートマトや完熟トマトお好みで)

にんにく

イタリアンパセリ

ブランデー

白ワイン

リングイーネ

伊勢海老のしっぽ(Coda di aragosta)

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伊勢海老のしっぽなんて聞きなれない名前のお菓子かも知れませんがナポリではとてもメジャーなものでスフォリアテッラ(Sfogliatella)という貝殻の様な形をしたお菓子の派生ともいえるお菓子です。このお菓子を一言で説明しますとナポリ式のパイシューです。とは言っても日本の一般的なパイシューとはかなり違いますので不思議に思われるかも知れませんね。近年ではこのお菓子を作るための生地(タッピと呼ばれています)がイタリアから日本に輸入されるようになりましたのでこのお菓子を巷のイタリア料理店で目にする機会があるかも知れません。

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タッピ

それでは生地の作り方をお話ししましょう。フレンチパイ(pâte feuilletée)が小麦粉の生地でバターを包んで折りたたむのに対してこれは小麦粉の生地を細長く成形して薄く伸ばしたところにラードを塗ってクルクルと巻くという作り方をします。それはまるで年輪のようで面白い形状をしています。その丸太の様な棒状のものが出来たら今度は両端を持って引っ張ります。そうすることで長く伸びた丸太の直径が小さくなっていき生地一枚一枚が薄くなる仕組みなのです。そしてその後一度冷蔵庫でしめてから1.5cm幅ぐらいにスライスしていけば仕上がりです。

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出来上がった生地をこのお菓子用に成形する時には生地を両手の中でコマの様に伸ばしていき最後にシュー生地を中央部に詰めてオーブンで焼くのですが、その焼き上がりがまるで伊勢海老のしっぽの様な形になることからこの名前が付けられました。

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周りのパイ生地はパリパリしていて中のシュー生地によって膨らんだ生地の中にはラム酒風味のクリーム(カスタードクリーム入りホイップクリーム)がたっぷり入っていて一度食べたらきっと誰でもファンになるのではないかと思えるほど魅力的ですよ。このお菓子ですがラム酒風味のクリーム以外のバリエーションとしてチョコレートクリームやレモンクリームのものもあります。

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伊勢海老のしっぽ材料

ナポリパイ生地(タッピ)

シュー生地

カスタードクリーム

生クリーム

ラム酒

アマレーナチェリーのシロップ漬け

パルミジャーナ ディ メランザーネ (Parmigiana di melanzane)

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なすのチーズ焼きはオリジンがシチリアだともナポリだとも言われていますがナポリのそれはまるでラザーニャみたいです。作り方はナスを揚げてモッツァレラチーズやパルメザンチーズ、トマトソースと重ねるという簡単なものですが作る人によって仕上がりが変わりますので面白いです。まずイタリアではなすのアクが強いことからスライスしたら塩を振るか塩水に漬けるなどの下処理をします。(これは日本では必要ないことです。) ちなみになすは皮がついたままでもピーラーで皮を剥いても構いません。皮がついたままだと目減りもしませんし皮も美味しいのですが時間が経つと色が出てきますのですぐに提供しない時には不向きです。次になすを揚げるのですがこれは作る人によってやり方が変わります。一番シンプルなのが素揚げです。次に小麦粉を振ってから揚げる方法です。そしてもう一つは小麦粉と溶き卵を付けて揚げるというものです。

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この違いですがなすが油を吸わない方法としては最初の素揚げが最適だと思います。二番目の小麦粉を振る方法ですがトマトソースを塗って重ねた時になすの馴染みが良くなるというメリットがあります。また最後の溶き卵を付けて揚げる方法ですが当然ながらなす自体の味はより良くなります。しかしながら油を多く吸ってしまうというデメリットがあります。これ以外のやり方としてはなすを素揚げしてトマトソースと重ねる時に溶き卵を少量かけてはなすを重ねるというものがあります。卵は火が入ると固まりますのでなす同士の結着がよりしっかりします。まあ結論なすをどう扱うかはお好みでということでしょうか。

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なすを揚げたらあとはトマトソースやチーズ類と重ねるだけです。トマトソースの代わりにナポリ風ラグーを使えばより美味しくできます。

初めに耐熱容器に少量のトマトソースを塗ってからなすを一段敷きます。そして少量のトマトソースを塗ったらモッツァレラチーズ、パルメザンチーズ、バジリコと乗せていき二段目のなすを敷きます。そして繰り返しトマトソースやチーズ類を重ねていきます。ただし最後の面になる部分にはモッツァレラチーズを乗せません。オーブンで長時間焼くと固くなってしまうからです。すべてのなすを重ね終わったらオーブンで焼くだけなのですが焼き上がったものをすぐに食べるということはありません。

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その理由としてイタリアの食文化では熱々のものをフーフーしながら食べることがないということがあります。日本人と違って猫舌の人が多いからと言われるかも知れませんがイタリア人的には料理は熱々の状態よりも少し冷ました方が味が馴染んで美味しいという考えがあるのです。ですからこのチーズ焼きは焼いたら少し置いておき、まだ温かいうちに食べるもよし、もっと冷まして常温で食べるもよしとされています。

 

なすのチーズ焼き材料

トマトソースまたはナポリ風ラグー

なす

溶き卵

モッツァレラチーズ

パルメザンチーズ

バジリコ

トルタ カプレーゼ(Torta caprese)

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カプレーゼと聞くとみなさんあのトマトとモッツァレラチーズの前菜を思い浮かべるのではないでしょうか?それぐらいカプレーゼは今日、日本において知名度の高い前菜ですが実はインサラータ カプレーゼ(Insalata caprese)=カプリ島風サラダの意味というのが正式な名称でイタリア語のサラダの部分を省略してカプレーゼと呼ばれているのです。

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カプリ島 青の洞窟

さて同じカプレーゼでも今日はドルチェのカプレーゼについてお話ししたいと思います。このお菓子はトルタ カプレーゼ(Torta caprese)=カプリ島風ケーキという名称で見た目はガトーショコラの様に見えますが味わいは全く異なります。ガトーショコラとの違いですが、まずこのカプレーゼにはアーモンドがふんだんに使われていることでしょうか、またガトーショコラには少量の小麦粉が入りますがこちらには全く使用されません。アーモンド、チョコレート、卵、バター、砂糖とシンプルな材料でしっとりと焼き上げます。またバリエーションとして白いカプレーゼ(Torta caprese bianca)とかレモンのカプレーゼ(Torta caprese al limone)呼ばれるレモン風味のものも作られています。カプリ、ソレントやアマルフィ地方はレモンの産地ですからね。

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レモンのカプレーゼ

このお菓子の起源について調べてみるとやはり色々な逸話があるようでとても面白いです。その中でも特に私が気に入っているものが二つありますのでご紹介したいと思います。

一つ目はアメリカのギャング アルカポネにまつわる話でそれは1920年代に遡ります。ナポリにルーツを持つニューヨークカモッラとの関係を強化するためにアルカポネは信頼できる手下達をナポリに派遣しました。彼らはビジネスのかたわら観光旅行も楽しんだのですが、カプリ島でその頃一番人気のあったカルミネ ディ フィオーレ(Carmine Di Fiore)の有名なパティスリーを訪れてそこでボスのために特別なお菓子を作るようと彼に命じました。それを聞いたカルミネは驚きと怖さのあまりその特別なアーモンドチョコレートケーキに何と小麦粉を入れ忘れてしまったのです。幸いにして手下達はこのしっとりしたケーキに大満足してくれたのですがカルミネはこのミスがバレないようにとその後も生涯嘘をつき続けるために自分の店でも小麦粉なしのアーモンドチョコレートケーキを提供したとのことです。それが今では世界中で愛されるトルタ カプレーゼとなったという話です。

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もう一つはハプスブルク家のマリア カロリーナ女王(Rregina di Napoli, Maria Carolina d’Asburgo)にまつわる話で18世紀に遡ります。マリア カロリーナ女王はあのフェルディナンド4世(Re Ferdinando IV)の王妃で彼女はオーストリア人でしたので大好きなザッハートルテ - Wikipediaがナポリにないことを知ってかなりのショックだったそうです。そこで何とかお抱えのシェフ達⇒モンズ(Monsù,Monzù)に作らせようとしたのですが当然彼女がレシピを知っている訳でもなく、またフランス人シェフ達も誰も食べたことのないお菓子でしたので試行錯誤を重ねた末に小麦粉を入れないこのドルチェが出来たという話です。

ただここで考えてしまうのはザッハートルテが生まれたのが1814年または1832年とされていることです。そうだとするとマリア カロリーナ女王(1752年-1814年)はザッハートルテを知らなかったことになるのです。つまるところ何が本当の起源なのかは分かりません。

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ザッハートルテ

トルタ カプレーゼ材料

基本の材料:

 アーモンド(皮なし)

 チョコレート

 卵

 バター

 砂糖

その他の材料(バリエーション):

 くるみ

 ココア

 ストレーガーリキュール

 ノチェッロリキュール

ピッツァ(Pizza napoletana)

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ピッツァ マルゲリータ

イタリア料理の中でも少しジャンルが異なるものとして位置付けられるのがピッツァです。カジュアルで場所や時間を選ばない食べ物でありそれだけで完結する食事でもあります。

通常イタリアでは高級レストラン(Ristorante)、庶民的なトラットリア(Trattoria)を問わずメニューにピッツァはありませんし逆にピッツェリアに行ってもパスタやメインディッシュなどのお料理はありません。ただナポリだけはちょっと特殊で高級なレストランでもピッツァを出しているところがあります。リストランテ ピッツェリア(Ristorante Pizzeria)という業態がこれにあたります。この業態ではピッツァだけを食べるもよし、またレストランで食事をする時にピッツァを取るのもよしと、とても使い勝手がよいと思います。

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きのこと生ハムのビスマルク

このピッツァを日本料理に例えるとその形状からお好み焼きの様だと言う人もいることでしょうが私はラーメンやお蕎麦、うどんに近い感覚ではないかと思います。その理由ですがこれらの麺類はどの時間帯でも食べられて普通一人一品を食べることや、それだけで食事が完結することがあげられます。また複数人で食べに行ってもあまり他人とシェアーなどしませんよね。各々好きなものを頼んで最後まで一人で食べませんか?これって正にピッツァと同じ食べ方なのです。いい和食屋さんでは通常お蕎麦はメニューにないですが稀に蕎麦を打てる職人さんがいて〆に出してくれるところがありますよね。そんなところもピッツァに似ていると思うのです。あとナポリのピッツェリアにはコーヒーがないことが普通ですがラーメン屋さんにも同じことが言えるのではないでしょうか?

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そんなピッツァの発祥の地はもちろんナポリです!庶民の生み出した素晴らしいローカルフード、ストリートフードと言っても過言ではありません。現に今でもナポリに行けばピッツェリアの店頭で焼きっぱなしの小ぶりなピッツァが一枚1~2ユーロで販売されています。もちろんモッツァレラは一切れしか乗っていませんがおやつとしてはこれで十分ですね。

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この小ぶりなピッツァですが一般的にイタリアでは朝ご飯を食べない人が多いのでお昼前になると小腹が空いてきてこれを目当てにやって来ます。(ナポリでの昼食は割と遅く14時ごろなのです。)お腹が空いた時にいつでも気軽に立ち寄ってパッと食べられる便利な文化ですね。ちなみにこの小ぶりなピッツァですがテイクアウトボックスには入れてくれません。それでは立ち食いしにくいですし値段も高くなってしまいますからね。ピッツァは折りたたんでわら半紙にくるんで渡してくれるのです。このテイクアウトのスタイルをピッツァ ア ポルタフォーリオ=お財布の意味 (Pizza a portafoglio o Pizza a libretto) なんて呼びます。

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もっと沢山ピッツァのお話をしたいところですがキリがありませんのでこの辺で終わりにしますが、ご興味のある方はパルテノペに来ていただいた際に私が書いた単行本がありますので一度ご覧になってみて下さい。ピッツァの歴史からその製法、食べ方やマナー、本物のナポリピッツァとは、真のナポリピッツァ協会などが詳しく書いてあります。

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そんなピッツァは世界中で食べられているイタリア料理界の代表選手だと私は思っています。

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真のナポリピッツァ協会認定看板 Buganville広尾

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真のナポリピッツァ協会認定看板 Partenope