渡辺 陽一 ナポリ料理ブログ

郷土料理を愛してやまないイタリア料理人https://www.instagram.com/watanabe_yoichi_/

ティンバッロ ディ マッケローニ(マカロニのティンバッロ)Timballo di maccheroni

ティンバッロ ディ マッケローニは特別なマカロニのオーブン焼きのことで大切な行事の際や家族と過ごす日曜日などの定番として広く愛されています。ティンパーノ(Timpano)とも呼ばれます。イタリア全土にマカロニのオーブン焼き(Maccheroni al forno)はありますが地方ごとに特徴があって様々なスタイルがあります。それはトマトソース主体の味付けであったりベシャメルソースであったり、また具材の違いなのですが地方によってはマカロニのオーブン焼きのことをパスティッチョ(Pasticcio di maccheroni)なんて呼ぶところもあります。また焼いてひっくり返したものはスフォルマート(Sformato di maccheroni)とも呼びます。

ティンバッロの名前の由来はケトルドラム(Kettle drum)を意味するフランス語の単語“Timbale”だといわれています。ですからティンバッロはシリンダー状の型にマカロニなどを詰めたオーブン焼きということになります。マカロニ以外の詰め物ではお米や野菜のティンバッロなどがイタリア全土にあります。

この料理は両シチリア国王フェルディナンド1世の統治時代、ブルボン家の宮廷で腕を振るったフランス人の料理人モンズ(Monzù)が考案したとされており、さぞかしその時代の貴族の食卓を華やかにしたのだろうと想像できます。また1773年に出版された料理書イル クオーコ ガランテ(Il cuoco galante)を書いたヴィンチェンツォ コッラード(Vincenzo Corrado)がティンバッロのレシピを確立したともいわれています。

ティンバッロに使われるパスタは穴の空いたマカロニが多くズィーティ(Ziti)、ブカティーニ(Bucatini)、リガトーニ(Rigatoni)、マッケロンチェッリ(Maccheroncelli)、メッザーニ(Mezzani)といったものが好まれます。

パスタと和えるソースは一般的にはナポリ風ラグーやトマトソースが多いのですが鶏ハツと鶏レバー、ソーセージ、乾燥キノコなどでトマトソースを作るやり方もあります。

その他の材料は小さいミートボール、ハム、ゆで卵、グリーンピース、モッツァレラチーズ又はプロ―ヴォラチーズ、粉チーズ(ペコリーノチーズ、パルメザンチーズやプロヴォローネチーズ)などです。これはほぼラザニアと似た様な材料です。

パスタを包む生地はパスタ・ブリゼ(Pasta brisé)と呼ばれる塩味の生地でキッシュなどに使われる練りパイですが、これも人によっては甘い生地のパスタ・フロッラ(Pasta frolla)だったりしますし、全く生地を使わないこともあります。このブログの最初に紹介したマカロニを生地で覆ったスタイルは高級レストランやホテルなどで提供される豪華なもてなし方です。

変わったものとしては最後のモンズと言われたジェラルド モドゥーニョ(Gerardo Modugno)が作った枢機卿のティンパーノ(Timpano alla cardinale)がありますが周りをトマトのオーブン焼きで覆ってその中にマカロニを詰めて焼きました。

さてティンバッロの作り方ですがまずパスタを通常よりアルデンテに茹でておきソースや具材と和えておきます。そして型を生地で覆ったものにそれを詰めた後、別の生地で蓋をして溶き卵を塗ってからオーブンで焼くというものです。ただ中が温かくなるまで40~50分程度焼きますので、その間にパスタが柔らかくなってしまわない様にパスタの茹で具合を工夫しなくてはなりません。

その昔フランス人の料理人モンズによって生まれた豪華なティンバッロですが時と共に庶民の間では台所の残り物の再利用としても重宝がられるようになりました。前日に残ったパスタや肉類など何でも使えるからです。家庭ではグラタン皿に詰めて表面だけパイ生地を被せて焼いたりもします。また全く生地を使わないやり方もあってその場合、型にバターをたっぷり塗ってパン粉をまぶしてマカロニを詰めて焼いた後、提供時にひっくり返すというやり方をします。ナポリ以外の南イタリアの地方にもティンバッロは存在していて特にシチリアのナスで周りを覆ったティンバッロは有名です。

パイ生地なしのティンバッロ

 

ティンバッロ・ディ・マッケローニ材料

ズィーティなどのマカロニ

ナポリ風ラグー又はトマトソース

小さいミートボール

サルシッチャ

ハム又はサラミ類

ゆで卵

グリーンピース

モッツァレラチーズ又はプロ―ヴォラチーズ

粉チーズ(ペコリーノチーズ、パルメザンチーズやプロヴォローネチーズなど)

パイ生地(パスタ・ブリゼ)

溶き卵(飾り用)